「おいしいね、このサラダ。こんな綺麗な半熟卵ってどうやって作るの?」



絵美が感心した顔で尋ねる。



正樹は料理人だから仕方ないことだけれど、自分よりも彼氏のほうが料理ができる、というのはやっぱりなんだか恥ずかしい。



「沸騰してから卵を入れて、七分。それだけ」



正樹が嬉しそうににっこりと笑うと、絵美は調子に乗ってどんどん食べてしまう。



心無しか最近太ってきた気がするのも、これが幸せ太りというやつなのかなあと絵美はむしろ嬉しく思ってもいた。



「おいしかった。ごちそうさまでした」



絵美が丁寧に手を合わせると、正樹は絵美の後ろに回りこんだ。



「えーみちゃん。片付けは後でいいからさ、今度は俺が食べる番」



そう言って後ろから絵美をがばっと抱きしめた。



「きゃあ!」



絵美はびっくりして声をあげる。



正樹はあははと笑いながら、絵美をひょいと持ち上げてベッドに優しく寝かせた。



絵美の顔が一瞬緊張で固まり、それを見た正樹がふざけて絵美に覆いかぶさった。



「おいしそう!いただきまーす!」



そう言って、正樹は優しく、絵美の唇をぱく、ぱくと食べるようにキスをする。



絵美は目を閉じて、どうしたら良いのかわからないまま正樹にされるがままになっている。



正樹に抱かれながら、こんな彼を知っているのは自分だけかもしれないと思うと、絵美はいつも幸せな気持ちになる。



抱きしめ合うたびに、彼を独り占めしたいと思ってしまうのはどうしてなんだろう。


彼を遠くから見ているだけで幸せだったのに、他の女の人と話しているのを見るだけで、心が締め付けられるのは恋人同士になってしまったからなのだろうか。