トルコの蕾





「えっ…」



太一が一瞬固まった。



「嘘だろ?」



「嘘じゃない、もう部屋も探してあるの」



太一は真希の目をじっと見た。心の中を見透かされるような気がして真希は目をそらす。



「…じゃあ、俺の気持ちはどうなるんだよ」



「タッちゃん、あたしはタッちゃんじゃ駄目なんだって。言ったじゃない」



駄目なのだ、どうしても。



どんなに好きで、一緒にいたいと思っていても、もうあたしたちは子どもじゃない。



「俺は…、真希が好きなんだよ!そんなの知ってるだろ?!」



太一は怒ったような、ほんの少し悲しそうな目で真希を見る。



そんな目をしないで。もう決めたことなんだから。



「あたしはタッちゃんとは結婚できないの!」



「なんでだよ!!」




真希は泣きそうになりながら黙り込む。



「タッちゃんにはあたしがいるじゃん、ってお前いつも言ってたじゃん。あれ嘘だったのかよ…。タッちゃん大好きって、小学校の頃言ってたじゃん。あれも、嘘だったのかよ…。俺はずっと本気で真希のこと…!」



真希はぎゅっと目を閉じた。



違う、あたしはタッちゃんが好きなんだ。だけど…。



「ごめん…タッちゃん」



真希が小さな声でそう言うと、太一は拳をぎゅっと握り締め、目に涙を貯めながら言った。




「降りてくれ。悪いけど」



真希がはっとして太一を見る。



「…降りろって言ってんだろ!!」



「タッちゃん…」



「降りてくれ。俺はお前の都合のいい男友達じゃない」




真希が黙って車を降りると、太一は黙って車を発進させた。



太一は泣いているのだろう。



シルバーのキューブを見送りながら、真希は溢れ出す涙を止めることができなかった。