「おーい、真希!!」
シルバーのキューブが止まり、窓から太一が手を振った。
「すぐ行く!」
真希は大きな声で叫ぶと、コーラと飲みかけのオレンジジュースを片手に車に向かって歩きだした。
太一の笑顔を見ると泣き出しそうになる。
いつもどんなときも優しく包んでくれた、太一の屈託のない笑顔。
「タッちゃん、はい、これ」
助手席に腰掛けると真希はコーラを手渡した。
「これ、ゼロキロカロリーのやつじゃん」
太一は偽物でも手渡されたかのように怪訝な顔で真希を見る。
「なによ、文句でもある?」
「俺、ほんもののコーラじゃなきゃ嫌だ」
「これだってコーラじゃない。あたしなんかこっちしか買わないわよ」
「だから真希はそんなにガリガリなんだよ、胸もないし。俺は、ほんもののコーラがいい」
真希は太一からコーラを奪い取りながら言った。
「なによせっかく買ってあげたのに。てゆうかタッちゃん、あたしの胸、見たことないじゃん」
「見せてくんないだろ」
「見せるわけないでしょ?!」
真希と太一は顔を見合わせて笑った。
「タッちゃん、あのさ、」
「何?」
真希は少し俯いて、オレンジジュースをごくりと飲み干した。
「あたし、彼と暮らすことにしたから」


