「琴美と奈々美のお年玉、準備してくれた?」



リビングのソファーに腰掛けて、リモコンを片手にテレビのチャンネルを凄まじい勢いで変えながら、キッチンで年越し蕎麦を温めている麻里子に向かって武は言った。



「もちろん」



そんなにチャンネルをカチカチ変えられていたら、どの番組も真剣に見る気がしない、と思いながら麻里子は夫の端正な横顔を見詰める。

出会った頃から変わらない若々しさと爽やかさは、妻である麻里子が嫉妬したくなるほどだ。

琴美と奈々美は麻里子と夫の武のいとこにあたる。
武の父親の弟の娘で、家族が集まる元旦に2人にお年玉を渡すのは毎年の恒例だ。



麻里子が温めた蕎麦にえびの天ぷらをのせて、リビングに運ぶ。



「さ、食べよっか」



麻里子と武は結婚して五年になる。


最初の一年は喧嘩が耐えなかったけれど、五年目の今となってはもう喧嘩をすること自体が時間の無駄だと思うようになっている。



「来年は三人で年越しだな」



武は嬉しそうに麻里子のお腹を撫でた。



「そうね」



妊娠5ヵ月の麻里子はゆったりとした服を着ていれば、元々が細身だからかまだ見た目には妊婦だと解らない。



「楽しみだな」



武は嬉しそうに呟いた。