初めてのキスは車の中で正樹が飲んでいた、苦いコーヒーの味だった。
帰りの車の中でも正樹の左手は絵美の右手を優しく握りしめていて、信号待ちで、あるいは道路の脇に車を止めて、ふたりは何度も何度もキスをした。
回を重ねるごとに少しずつキスは激しさを増し、正樹の舌が絵美に侵入してくるたびに、絵美はぎゅっと目を閉じた。
織姫と彦星も、ひさびさの逢瀬を噛みしめるように何度もこうやって、深いキスを交わしたのだろうか。
別れを惜しむように彦星が織姫の手を握り、何度も抱きしめたのだろうか。
絵美は窓の外の星空を眺めながら、そんなことを考えていた。


