正樹は絵美の肩を抱いたまま、絵美の顔を覗き込んだ。
「駄目…かな?」
絵美はぶんぶんと首を横に振る。
「そんなわけ…ないです。」
「良かった」
絵美は正樹をじっと見詰めた。
夢じゃない。
本当に、こんなに近くに彼がいる。
あんなにも憧れた彼が、すぐそばにいる。
「…ほんとに良かった」
正樹はそう言うと、両手で絵美の肩を引き寄せて、優しくそっと抱きしめた。
「好きだよ。ずっと好きだった」
耳元で囁かれた言葉に、絵美は思わずぽろりと涙を零していた。
「あたしも…好きです」
満天の星空の下、正樹は絵美の唇にそっと口づけた。
絵美の、生まれて初めてのキスだった。


