太一は小さな写真立てに収まった、一枚の写真を見ながらベッドに寝転がっていた。
小学校の遠足で行ったダリア園の写真には、色とりどりに咲き乱れたダリアに囲まれて、嬉しそうに笑う真希と太一が写っている。
いつからだろう。
こんな風に、真希のことをひとりの女として愛するようになったのは。
初めて付き合った彼女とは、真希からお土産でもらったキーホルダーを、どうしても外せなかったことが理由で別れた。
大学時代に付き合った彼女とは、初めて免許を取ったときに一番に真希を助手席に乗せてドライブをしたことが原因で別れた。
「お前のせいで俺はまた振られた」と太一が真希に向かってぼやくと、あっけらかんとした顔で「タッちゃんにはあたしがいるじゃん」と真希はいつもそう言って笑った。
真希の笑顔が見たくて、真希と同じ時間を過ごしたくて、気がつけばいつもいつも真希のことばかり考えていた。
男と別れたと言っては愚痴を言うためだけに太一を呼び出していた真希が、男のことを一切話さなくなったのは今の男と付き合ってからだった。
後ろめたい気持ちもあるのだろう。
人の男に手を出すことがいけないことだとわかっていながら、きっと止められなかったのだ。
「俺はどうすればいい?」
太一は写真の中のあどけない真希に向かって呟いた。


