絵美は両手でズボンの太ももをぎゅっと握りしめていた。
一緒にいると自分がどんどん正樹に惹かれていくのがわかるからだ。
こうして話ができるようになった今も、正樹の横顔をみているといつの間にか、体がふわふわと地につかなくなる。
バレンタインに初めて話したときよりずっと、もっと正樹のことを好きだと感じているのがわかるのだ。
ときどき、ブロロ、と音をたてる古くて優しい白いワゴンで、こんな風に正樹の隣に座って、ふたりきりで天の川を見るためにどこかに向かっているなんて。
絵美は幸せすぎて今でも信じられない気持ちだった。
「正樹さん、あたし…あなたのことが好きです」
ブロロ、とマフラーが唸るような音が聞こえた。
空は少しずつ星が増えて、きらきらといくつも小さな光を放っている。
正樹は黙って、左手で絵美の右手をぎゅっと握った。


