クリスマス、年末年始、バレンタインに、母の日の準備に追われるゴールデンウイーク。
恋人と過ごすべきイベントを、ことごとく仕事で深夜まで店にいなければならない花屋という職業で、普通のサラリーマンと付き合うのは難しいだろうと園山は思った。
真田真希はどんなイベントでも、深夜まで店に残って翌日の準備を完璧に済ませ、報告書を送信して来る店長だ。恋人がいるなら少しでも早く帰宅して彼に会いたいと思うはずなのだが、イベント時の彼女にはそれがない。
「訳あり…ってやつか…」
園山はぼそっと呟いた。
この歳にもなると、身近な既婚者の友人には若い不倫相手がいる者も珍しくはない。
特に自分のように普段から遅くまで仕事をしている友人達は、不倫もなかなかバレないのだという。
「なるほど…な」
真田真希の眼差しの奥にある、寂しげな表情の原因はひょっとしたらそれかもしれないと園山は思った。


