猛のことを初めて紹介されたのは、24歳のときだった。
三つ年上の婚約者、武の学生時代からの親友だという猛に、麻里子は不思議な印象を持った。
婚約者の武は、どちらかというと女性の扱いには長けていて、麻里子に対してもいつも堂々と振る舞っている男だった。
出会ったときも武はごく自然に麻里子に連絡先を聞き、スマートに食事に誘い、まるで水が流れるように自然に恋人関係になった。
武の携帯電話のアドレス帳にはどこから疑えば良いのか解らないくらい女性の名前が満載で、逆に武に対して女性関係の話を訊ねることはタブーな雰囲気さえあった。
『そんなことを聞いて来る女は面倒くさい。』
そういう雰囲気を醸し出している男だった。
その武の親友にしては、猛はどう見ても不器用で生真面目で、付き合いにくい男という印象だったのだ。
それはサッカー部の絶対的エースとゴールキーパーという、ふたりのポジションの違いから来る麻里子の勝手なイメージなのかもしれなかったが、まさにそのふたりの性格がそれぞれのポジションに当てはまり過ぎていて、麻里子は思わずクスリと笑ってしまったのだった。
麻里子は今でも忘れない。
クスリと笑った麻里子に対して、猛が威嚇するような表情で初めて発した言葉。
『何がおかしい?』
初めて会ったばかりの女性に対して、あまりにも配慮に欠けた不器用な振る舞いだった。
彼が女性を愛したらどうなるのだろうと思った麻里子は、いつしか猛に惹かれ始めている自分に気が付いた。
彼の時折見せる優しさには嘘がなく、女性の扱いに長けた武のそれとは違っていた。


