「だから、面白いって言われたくないんですよー。あ、ビール頼んでいいですか」
「もちろん、どうぞ」
園山とナミちゃんのやりとりを見て、ママは笑った。赤い口紅がぎらりと光る。個性的な顔立ちはどう見ても美人ではないが、この店に来るとなぜか楽しい気分で酒が飲める。
「雅ちゃんがそんなに楽しそうに笑うのは、ひさしぶりだわね」
「そんなことないだろう。俺はいつも機嫌悪いみたいじゃないか」
「あはは、そうなんですかぁ」
「だから、違うって」
ママはまだ笑っている。
「ナミちゃんはなんで関西から出てきたの?」
園山はそう言ってウイスキーを口に含ませる。
「ええ、そんなこと聞くんですかー」
「いや、言いたくなかったら言わなくてもいいけどね」
ナミちゃんは少しだけ黙って、お世辞にも上品とは言えない飲み方で勢い良くビールを飲む。
「ぷはー」
それを見て、園山はまた笑った。「いい飲みっぷり。美人が台無しだ」
ナミちゃんは笑っている。
「ナミちゃんはね、男を追いかけて出てきたんですって」
ママがうふふと悪戯っぽい笑みを浮かべる。それを見てナミちゃんは拗ねたような表情になる。
「もう、雅ちゃんカッコイイから内緒にしようと思ったのにー」
園山はあははと笑い、「そうなんだ、なるほど」と言った。
「彼には、会えたの?」
「まだ会ってません」
ナミちゃんはぷうと頬を膨らませた。可愛い女だな、と園山は思い、また機嫌よく酒を飲み始めた。


