待ったをかけたぼくに、月子ちゃんはひどく冷静に答える。
心から本気の目だった。
「なんとなく、よ。あの子いますごく不安定な時期なの。余計な刺激与えたくないのよ」
「だ、だってぼく、“月子ちゃん”、なのに…!?」
「あなた絶対あたしのフリなんて上手くできないでしょう」
「う、そ、そう、だね…わ、わかりました…」
確かにその通りだった。
ぼくに月子ちゃんのフリをし通す度胸も器用さも無い。
皆無だ。
ここは素直に言うとおりにしよう。
もうぼくにできるのはそれくらいだ。
そんな話をしていたら、月子ちゃんの家が見えてきた。
目の前にその家が見えたとき、ぼくの家でもないのになぜだか無性にほっとした。
この体が、月子ちゃんのだからだろうか。
そして次の瞬間。
「………」
「………」
ぼく達は元の体に戻っていた。