「でも月子ちゃん、このまま帰って、その後どうするの…?」

買い物袋をガサガサ鳴らしながら、並んで歩く。

もう何度か互いの家を行き来しているおかげで、月子ちゃんの家までは携帯なしでも辿り着くことができるようになった。
これってちょっと、すごいことだと思う。
ぼく的には。

「設定は考えたわ」
「設定…?」

首を傾げるぼくに月子ちゃんは、マジメな顔で自信ありげに頷いた。

「“あたし”は、やっぱりまだ、体調が悪いことにしておくの。弦にそう言ったんでしょう?」
「う、うん、まぁ…」

「だから帰ったらあなたは寝てていいわ。あたしの部屋で」
「え…っ、ていうか、じゃあ月子ちゃんは…」

「あたしはだたの通りすがりの“買い物を手伝った通行人A”よ。ついでに夕飯の支度して洗濯して掃除して明日のお弁当の下ごしらえして、帰る」
「ちょ、ちょっと待って月子ちゃん! あ、明らかにおかしいよ…!」

ただの通りすがりの通行人が、他人の家に上がりこんで家事までする意味がわからない。

月子ちゃんが一体どのくらい本気で言っているのかはわからなかったけれど、月子ちゃんの家へはぐんぐん近づいていく。

ぼくはハラハラしながらその隣りを歩くけど、歩幅が違うせいで度々置いていかれそうになった。