ぼくはしつこくグチグチと訴え続けたけれど、カートを力づくでひっぱる月子ちゃんに全て聞き流される。
月子ちゃんはぐんぐんと人の群れに突進していく。
ぼくはついていくのがやっとだった。

「うう、こんなとこでもし、桜塚達に会ったら…!」
「こんなところに桜塚達みたいな坊ちゃん連中が来るわけないでしょう、ばかね」

確かにそれは、そうかもしれない。

ここは業務用のスーパーで、ただいまタイムセールの真っ只中。
月子ちゃん家は休日のこのタイムセールで、1週間分の食料をまとめて確保するのだそうだ。

月子ちゃんの家に帰る途中、ついでに食料の買出しをすることになった。
そして嬉々とした月子ちゃんに連れてこられたのが、この場所だった。

そこにはぼくの、想像もつかないような世界が待っていた。