「さ、さっき、髪の毛も触ってたでしょう…? 多分、その時のかと…」

カラースプレー? しかも黒の…? 
なんだって一体そんなものをして学校に来てるんだろう。

そうだ、思えばこの伊達メガネも。
“あたし”に比べたら全然視力は良いみたいなのに。
これじゃあまるで…

「そ、そんなことよりもまずは、明日から、どうしよう…! このまま戻らなかったら…!!」
「あ、そう、そうね…今日金曜だけど…こんな時に限って、明日補講があるし…」

「が、学校、来る気なの…?!」
「当たり前でしょ、先に言っておくけど何があっても学校には毎日来てよね。あたし皆勤賞ねらってるんだから」

「む…ムリだよ…!」

今度は“彼”が、大きく叫ぶ。
あたしの声でなんだけど。

「だってぼく、昼間はほとんど家から出たことないんだもん…!!」
「……はぁ?!」

ちょっと、待って。
つまりはえっと。

流石に思考がついていけずたじろくあたしに気づいてか、気まずそうに視線を外したまま彼が補足の説明をくれた。

「ぼく…昼間はずっと、ひきこもってて…学校には殆ど、来たことないんだ…」