「1日に2度も髪染めるの面倒くさいし、フード被るから、メガネだけでいい?」
「あ、う、うん! いいよ、今日はもう、いいよ…!」

いつもなら外に出る時は絶対染めてって言うくせに、あたしへの罪悪感からか、彼はすんなりと了承してくれた。

パーカーのフードを目深に被り、さっさとカバンと携帯だけ持ってスニーカーを履く。
はやく家に帰りたい気持ちと、はやくこの部屋から出たい気持ちに駆られた。

「で、あなたは?」

すぐ後ろに居る彼に向き直って、訊く。

ここは彼の部屋で、帰る家だ。
それでもあたし達は今お互いの体が入れ替わっていて、帰る場所も違うってことぐらい、もう十分分かっていた。

だけどなぜかそう、訊いていた。
あたしにもよくわからなかった。