「…つ、月子ちゃん…?」

薄暗い部屋の片隅から声がした。

それは馴染んだあたしの声であり、彼の声。
それがすぐに分かったから、驚きはしなかった。
なんとなく居るとは予想していたけれど、実際に居てくれたことに、少し安堵した。

気配を伺いながら、ベッドとクローゼットの隙間からこそりと小さな人影が這い出る。
一応隠れていたらしい。

自分の部屋なのに、なんだかその様子が可笑しかった。
少し笑ったら、吐き気も少しおさまった。

「……終わった、わよ…」
「…っ、ごめんね、吐きそうなんでしょう? いいよ、吐いて」

「いやよ、もったいない…」
「えぇ、そういう理由なの!?」

あたしの顔をした彼は、情けないくらいに動揺して、表情がくるくると動く。

あたしの体はあたし自身よりも、彼が中に居る時の方が素直に思えた。