食事を終えたあたしは、部屋の前まで彼のお兄さんと一緒だった。
「陽太」
部屋のドアの取っ手に手をかけたところで、ずっと無言だった彼のお兄さんが、呼ぶ。
反射的に振り返ると、彼のお兄さんがやはり無表情で言った。
「お前はいつまで、そこに居るつもりなんだ」
──右手が、痛かった。
同時に胃も痛みだし、吐き気に襲われる。
食事を全部食べたことを今さらながらに後悔した。
あたしは何も答えず、応えられず、部屋の中へと逃げ込んだ。
真昼だというのに彼の部屋は、カーテンを閉め切っていて薄暗い。
ドアを閉める音が部屋に響き、その後静寂に包まれる。
冷たいドアにもたれながら口元を押さえた。
吐きたくてもここに吐いたらまずいという本能でなんとか堪える。
だけど全部吐き出したくて堪らなかった。
左手が、疼く。
右手の手首が痛くて痛くて堪らなかった。