自分が居る、外に出る扉とは反対のドア。
本宅と繋がっている方のドアだ。
つまり、ドアの向こうに居るのは、彼の家族の誰かしらということになる。

流石にいきなりこのタイミングでは、心臓が追いつかない。
動揺して声も出せずに居ると、返答も待たずにいきなりドアが開いた。

そっちのドアには鍵付いていないのか!

思わず場違いにもつっこんでしまった。
ドアの向こうに居たのは、すらりと長身の男の人。
思い当たる人物はひとりしかいない。

──“晃良兄さん”──

そう、お兄さんだ。確か彼とは9つ違うと、前に言っていた気がする。
落ち着いて思い出せば、昨日も一度対面している。

だけど昨日はそれどころではなかった。
手首から血がどばどば流れていたのだから。
お兄さんの顔もまともに見れなかったのだ。

細いフレームのメガネをかけた切れ長の瞳で、じっと見られて心臓が撥ねる。
整った顔立ちではあるけれど、そこには感情は全く浮かんでおらず、ほぼ無表情だった。

こうして改めてみると、あまり彼とは似てないなとぼんやり思った。