そんな、バカな。
そんな、非現実的なことが、あるわけない。
起こるわけない。
あっていいわけない…!
「なんで! どうしてこうなったの…!?」
「ぼ、ぼくにも分からないんです…! ぼくも一瞬気を失っていて…気が付いたらこうなっていたんです…!」
「気を失うって…あなたも…?」
「お、覚えてないんですか…? ぼくは、屋上に向かって、この階段を上がっていて…そしたら上から、あなたが降ってきたんです…いきなり…」
降ってきた? あたしが…?
ズキズキする頭を思わず抱えながら、気を失う直前のことを思い出そうと記憶を探る。
屋上に居たのは確かだ。
でもその後はどうしたっけ?
起き上がるのもひどく億劫だった。
ぼんやりと星空を眺めていた気がする。最後の方はひどく曖昧な記憶だけど…でも、そうだ。
ひとりじゃなかったはず。
「他、に…誰か、見た…?」
「え…いえ、あ、の…気が付いてすぐに屋上に行ってみたんですけど、特に誰もいませんでした…」
「……そう…」
痛む頭を押さえながら、ため息混じりになんとか吐き出す。
なんとなくだけど思い出してきた。
偶然屋上を後にするあたしと偶然屋上に向かう彼が、見事ぶつかり(どうやらあたしの過失という可能性が大きいみたいだけど)階段から転げ落ちて、こんな事態になってしまった、らしい。