『お願い月子ちゃん…! 食事は適当に、食べてるフリだけで良いから…いつも残しても何も言われないし…!』
「なにそれ、食べちゃダメなの?」
『ぼ、ぼく、あんまりごはん、食べれなくて…』
「は?」
『気持ち次第で、少しは食べれるんだけど…たくさん食べると、吐いちゃうんだ…』
「…そんな状態で、あなたの家族をいっきに相手しろってこと…」
ほら、なんて、厄介な。
重たい息を吐くと同時に思わず頭を抱える。
そんなあたしの心情を悟ってか、彼が慌てて声を大きくした。
『で、でも、晃良(あきら)兄さんも父さんも、ぼくには殆ど関心ないし、話しかけてくるのは母さんぐらいだから…っ 適当に相槌打っておけば問題ないし…!』
「…あたしにとってはみんな他人じゃない」
『そ、そうなん、だけど…っ』
再び彼の声に情けの無いベソが混じる。
そう泣けばなんでも解決すると思っているのだろうか。
単に根性無しなだけなんだろうなとは思うけれど。
彼になりすまして、ひきこもりを知らない家族と、揃って食事。
誰かのフリをするなんて限界がある。
まだ知り合って3日のほぼ他人だ。
その家族と一緒に食事だなんて、そんなのムリに決まってる。
彼がいつもイヤだムリだと言う度に叱咤していた分、そうカンタンには口にできないけれど。