条件反射のように差し出されたものを受け取ると、それはうちの学校の学生証だった。

月明かりだけの心もとない明かりの下で、受け取った学生証を凝視する。
フルネームに学年とクラス、そして本人の顔写真。
入学前の事前説明会で撮ったのだ、確か。

二年B組 出席番号十五番 鈴木陽太。

「これが…“あなた”…?」
「はい…というか、その体でもありますけど…」

学生証に載っているのは、見知らぬ男の子。
暗がりでよく見えないけど、わりと整った顔立ちをしている気がする。
多分。

これが、この人。
鈴木陽太。

今の“あたし”は、この学生証の人物になっていて…今目の前に居る“あたし”は、あたしじゃないわけで。

あなたがあたしで、あたしがあなたで…………

「…つまり今の事態を簡潔に説明すると…」
「…はい…」

あたしとこの人の体が、中身が

「入れ替わったっていうこと…?!」
「…どうやら…そのようで…」

叫んだ声は暗い校舎に良く響き、痺れるくらいに頭にも響いた。