「…いいんだ、解ってもらえなくたって」
「あなたのことじゃないわよ。あなた自身のことは、あたしがどうこう言う問題じゃないでしょう」
「……へ」
「そのクソガキよ、随分しつこいクソガキが居るんだなと思って」
「…え、…あ、いじめっこのほう…?」
「まぁ、あっち側の心理なんて理解できなくて当然なのよね。立場が逆なんだから」
それはぼくも思った。
ぼくも同じこと、思ったよ。
「…ふふ」
なんだかぼくは少し拍子抜けして、思わず笑ってしまった。
月子ちゃんはそんなぼくを見て、少し顔をしかめたけれど、気にならなかった。
ぼくだったらこんな重たくて暗くて面倒くさい話されたら、絶対ひく。
だって関わったって、良いことなさそうだもん。
実際きっと、ない。
だけどぼくらは、ぼくらの意思を全く無視して、関わりあってしまった。
月子ちゃんがこうして隣りでぼくの話に付き合ってくれるのも、仕方が無いのだ。
だってぼくは月子ちゃんで、月子ちゃんはぼくなんだもん。
そう思うと、少しだけ気楽に思えて、可笑しかった。
この場所で笑うなんて、想像もつかないことが起きた。
それだけで充分ぼくにとっては“奇跡”みたいだと思った。
月子ちゃんはきっと呆れるだろうから、口には出さないけれど。