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――ぼくはね、3兄弟の末っ子で、一番甘やかされて育ったと思う。

医者の家系に生まれ育って、小さい頃からもう、ぼくの将来は決まってた。
それでも父さんの病院を継ぐのは一番上の兄さんだって誰もが疑わず、勿論ぼくもそれに不満はなかった。

一番上の兄さんは、それは優しくて聡明で、自慢の兄だった。
我が家にとっても、一番の。

ぼくも兄さんが、大好きだった。


…小学校にあがってから、この髪色を理由にいじめられるようになった。

段々勉強は手につかなくなっていって、学校に行きたくなくなっていって、それでもいじめっこ達はしつこくどこまでもぼくを追いかけてくる。

学校に行っているフリをして、サボるようになる日が続いた。
いじめっこ達はどこまでも追ってきた。

…ある日ぼくは彼らから逃げるあまり、迷子になってしまった。

日も暮れ、雨まで降ってきて…帰り道もわからず、寒くて凍えて死んでしまうかと思った。
ぼくは泣きながら、見知らぬ公園の遊具の中で、一夜を過ごした。


一晩空けて警察に保護されてぼくが連れていかれた先は病院で…そこには包帯と管に巻かれた兄さんが横たわっていた。
兄さんはぼくを探して雨の中、事故に遇った。

手術後一命はとりとめたけれど、兄さんは右半身の自由を失った。視力もほとんど見失った。


兄さんは目が覚めてから3日後に、自殺した。