「…こっちの実習棟は空き教室が多くて、あいつらが溜まり場にしてるの。今日学校に来てるかはわからなかったけど、先にちゃんと言って、場所を移しておけば良かった。…ごめん、ね。痛い思いさせて…」

月子ちゃんのその物言いが、昨日や今日の朝までと違って申し訳なさそうで、思わずぼくは首を振った。

目元に溜まっていた涙がパラパラと飛び散って、肩を優しく撫でていた月子ちゃんの手をも濡らす。

月子ちゃんが謝る必要なんて、ひとつもないのに。
月子ちゃんの体を守れなかったのは、ぼくの方なのに。
謝らなければいけないのはきっと、ぼくの方なのに。

だけど情けないぼくは嗚咽を堪えるのが精一杯で、言葉にも声にも成らなかった。
そんなぼくに月子ちゃんは少しだけ笑う気配を落とし、それからぼくの隣りに腰を下ろす。
こうして並んで座ると、昨日の夜みたいだと思った。

「…けっきょく、完全には戻らなかったみたいだし…もう少しだけ、お互いの話をしましょうか」

その言葉に、ぼくはこくりと頷く。

ぼくも話さなきゃいけないことが、あると思った。