月子ちゃんはゆっくりと腰を下ろし、そっとぼくの右肩に触れた。
ぼくは驚いて反射的に体を退いてしまったけれど、すぐ後ろは壁で、とっさに退いた右肩を思い切り打つ。
途端に右肩に鈍痛が走り、思わず声を上げた。
「いだっ!」
「なにしてるの、ばかね」
物言いは相変わらずキツかったけれど、その顔は何故か哀しそうだった。
それから再び月子ちゃんは手を伸ばす。
ぼくはなんだか申し訳ない気持ちで、ただ黙ってそれを受け入れた。
彼女達と会ったことを、月子ちゃんに言った方がいいのかわからなかった。
どうせ体が戻ったとき、この痛みで気づかれてしまうとわかっていても。
「…肩のところ、制服に足跡が付いてる」
その一言に、ぼくは思わずぎくりと顔を強張らせてしまう。
月子ちゃんだったらきっと、こんなバカみたいに何でも顔に出したりしないだろうに。
ぼくが余計な気を遣って隠そうとしたって、結局全部バレバレなんだ。
きっと余計なお世話だったに違いない。
そう思うと余計に情けなくて涙が滲んだ。
咄嗟に俯いたけれど、隠せるわけない。
肩も痛かったからもう、仕方なかった。
仕方が、なかった。