どれくらいの時間が経ったかもわからずただ呆然としていた。

校内は不気味なくらい静まりかえっていて、ここにはぼくひとりだけのような、そんな錯覚さえするほど。

少しずつの時間をかけて、体の感覚がゆっくりと戻ってくる。
ぴくり、と指先に神経が伝わったとき、痛いという感覚だけが体に残った。

「……っ、っく」

涙が出た。

だってすごく、痛くて。
痛くて痛くて、どうしようもなくて。
そして同時に、とてつもなく情けなかった。

ぎゅう、と両腕に顔を押し付けて蹲る。
右肩が痛くて上手く力が入らない。

だけど何故か無性に、そうしたかった。
痛みを堪えて両腕を抱いた。

きっと、さっきまで涙ひとつ流さなかったのは、月子ちゃんの体だ。
そして今泣いているのは、ぼくの所為だ。
ぼくの弱さが、泣くからだ。

“身体”が時に主のいうことをきかないように、“身体”にも記憶や意志があるというのは、本当なのかもしれない。
本人を差し置いて、感じるものやそれとは逆に封じるもの。

“身体”と“心”は、繋がっている。

今この体の中に居るのがぼくだとしても、この体は“月子ちゃん”として、自らの意思で動く時がある。
そう思えてならなかった。