月子ちゃんを呼ぶ、女生徒の声。
気配はひとりだけじゃなく、複数居る。
その声はとても冷たく耳に届き、体が一瞬で凍りそうなほどだった。
「はは! 補講、来てたんだぁ」
「当たり前じゃん、だって山田、特待生だもんねぇ」
ゆっくりと、半ばムリヤリに体を傾けて、なんとか振り返る。
体自体がそれを拒否しているかのように、重い。
…苦しい。
声は足音をたてて近づいてくる。
「定期テストで一定の基準以上の点数とらないと、奨学金取り下げなんでしょぉ?」
「あらーじゃあガッコ辞めるしかなくね? だって山田ん家、ビンボーなんでしょ?」
3人の、女生徒だった。
それぞれみんなスカートは短く、髪色は明るく、制服はほとんど原型を留めていない。
もちろんぼくは全く知らない人。
月子ちゃんのことは知っているみたいだけど…だけどわかる。
きっと誰だってわかる。
月子ちゃんの友達ではないってことくらいは。
その内のひとり、人工的な金髪の女子がぼくの目の前で腰を落とすと、ぐっとそのやはり人工的な顔を鼻先に近づけてきた。
「今回は補講でなんとか免除してもらえて良かったねぇ。なぁんで特待生の山田サンは、テストで0点なんかとっちゃったのぉ?」