自分のじゃないと解っていたけど、ディスプレイに映し出された番号を見た瞬間、もはや反射的に通話ボタンを押していた。

「……っ、も、もしもし…!」
『……もしもし…?』

電話の向こうから、男の声。

一瞬誰だかわからず身構えてしまったけど、違和感はあるけど、これは、自分だ。
ぼくの声だ。

だけどぼくじゃなくて…

「つ、月子ちゃん…?!」
『…そうね。認めたくないけど』

「う、うう、ぼ、ぼく、学校で…!」
『そうでしょうね。あたしはさっきまで補講を受けていて、最後の確認テストの問題を解いていたんだから』

「うう、月子ちゃんん~~」
『ちょっと、あたしの声で情けない声出さないでくれる。今どこなの?』

受話器の向こうから聞こえてくるのは、いつもより落ち着いたぼくの声。
なのに、声はぼくなのに、いつもは弱音しか吐かないぼくなのに。

中身が月子ちゃんが語るぼくの声はとても落ち着いていて、今度は安堵の涙が零れた。