「…昴流さん、学校、来てくださいよ。もうすぐ卒業なら、なおさら」
陽太は先に車に戻った。
教室に行くのは、当初の予定通り、来週からにするらしい。
ここまで来たのだから、顔だけでも出せばいいのに。
相変わらず、意気地なしなんだから。
裏庭にはまた、ふたりになった。
でもあたしもそろそろ、行かなくちゃ。
「あたしもこれから…少しずつ学校、楽しみたいと思います…だから」
昴流さんはベンチに腰掛けたまま、もうあたしのことは見ていない。
「今度、昴流さんがピンチの時には、恩返し、させてください…いつか」
あたしの言葉にようやく、昴流さんがゆっくりと顔を上げた。
その口元は少しだけ、笑っていて。
「…いつか?」
「はい、いつか」
ゆっくりと、立ち上がるその瞳があたしを見下ろす。
陽太のとは違う金色の髪が揺れて、木漏れ日に反射していた。
綺麗だと思った。
触れる温もりは、確かにやさしくて。
あたしは少しだけ笑う。
……そう、きっと…いつか。