「ご、ごめんなさいごめんなさい…!」
咄嗟にそう口にして頭を勢いよく下げるだけが精一杯で、体の向きを変えまた走り出す。
そんなわけはないのに、今のひとが追いかけてきたらどうしようと思うと怖かった。
捕まって殴られる前にはやくここから逃げなくちゃと、それだけしか考えられなかった。
ああ、でもぼく、昼間まともに学校に来たことがないから…!
ここがどこで、どうすれば外に出られるのか、わらかない…!
しかも他の生徒達との接触を避けたいのだから、通常の昇降口からなんて論外。せめて1階に降りて窓から出られればいいけれど、どこの階段から降りてもダレかが居る気がする。
ムリだ。
怖気づく。
今この場所に居るという事実だけで、遠くにダレかの声を聞くだけで、泣き叫びたいくらいの恐怖に襲われた。
「…ぅ、っく、どうしよう…」
思わず声が漏れた。
流石に息が上がり立ち止まると、足がガクガク震えて立っているのもやっとだ。
情けない。
わかっている。
こんな、なんて…
――ブブブブブブ
「ひ…!」
スカートのポケットから微振動を感じ、驚いて思わず飛び上がる。
しかし瞬時にその存在を推測できたぼくは、すぐさまソレを取り出した。
それは自分のものとは正反対で、まるっこくて、ぶ厚くて、懐かしいカンジがする、月子ちゃんの携帯電話だった。