その言葉が脳みそまで到達した時。
堪える間もなくあたしの目からは、涙が零れていた。
「……っ」
自分でもよくわからない。
この涙がどういう理由で流れているのかを。
ただやっぱりホッと、した。
「……覚えてなかったんだね、やっぱり」
「……は、い…」
押し倒された時の記憶は鮮明で、忘れられない。
だけど最中のことは全く覚えていなかった。
気がついたらひとりで、あの屋上に居たから。
「まぁ、そういうことだから。アイツらも居なくなったし、ガッコもつまんなそーだし、どうせもう卒業だし? だから来てなかっただけ。だからきみも、もういいよ。フツーにアイツと学園ライフを送ればいいんじゃないの」
なんだかその物言いが、拗ねた子供みたいに聞こえておかしかった。
そんなわけはないのだけれど、ホッとして、気が緩んで。
少しだけ自然と、笑えた。
「……でもさ…いっこだけ、果たしてもらってない約束があるんだけど…」
「…え…?」
捕まれていた腕に、力が入る。
ひかれるように顔を上げると、思ったよりも至近距離に顔があった。
目が、合う。
寂しい獣のような目をしていた。
そこに自分が映る。
それをもうこわいとは思わなかった。
その瞳が、細められる。
そして――…
「――…ちょ…っと、待ったぁああ!!」