「まさかきみの方から呼び出されるとはねぇ」
「…あれから一度も、学校に来ないから」
「んでわざわざジョーに聞いてくれた、と。なにもしかしてツンデレってやつ? 前はあんなに冷たかったのにさぁ」
昴流さんは相変わらずの態度で、ベンチにだらりと座っていた。
あたしもその隣りに腰掛ける。
その視線があたしを見やり、棒付きのキャンディをコロコロと口の中で転がしている。
「髪、切ったんだ」
「…はい」
いつも耳元で縛っていた、肩まで伸びていた髪を少し切った。
耳より少し下のあたり。おかっぱよりは少し短め。
断髪式の指揮をとってくれたのは朔夜だ。
縛らなくていい長さをオーダーし、朔夜に任せた結果だった。
特に不満はなかったし、わりと気に入っている。楽だし。
『…月子、大学行けよ』
髪を切る途中で、朔夜がふいにそう口にした。
あたしは一瞬の間を置いて、頷いた。
諦めきれない夢があった。