「な…んだよ、これ…!」
「やっぱり隠しカメラはちゃんと隠しとくもんだよねぇ」

「アンタの…仕業か…!」
「いやいや、隠しカメラ仕込んだのはジョーだけど?」

「そこで俺の名前出すなよめんどくせぇから」

教室内が、ざわつく。

「な、なんで…! だってカメラなんてどこにも…!」

ぼくを押さえていた桜塚の取り巻きが、青い顔で教室内を見回す。
確かにぱっと見える所にカメラは見当たらない。
でもこの映像を見ると、かなり至近距離にあるはずだ。
ぼくの血まみれの顔も、桜塚たちの顔も、みんな。
はっきりと映し出されているのだから。

「……もしかし、て…」

青ざめていた堀越恭子の顔が、クラスメイト達へと向けられる。
携帯を持つ手は、小刻みに震えていた。

「あんた達…!」

化粧で整えていた顔が、これでもかというほど歪んでいる。
その映像も真正面から画面に映し出されていた。

遠巻きに見ていただけの、クラスメイト達。
その一番最前列の男子が、抱えていたカバンからカメラを取り出した。
カバン側面の一部が切り取られ、レンズの形に穴が開いていた。

「…もう…イヤだったんだ…」

顔も名前も知らないひとだ。
カメラを持つ手が震え、携帯の中の画像も震えた。

「…イヤだったんだ…!」

するりとカメラがその手から滑り落ち、音を立てて床に転がる。
それと同時に携帯に流れていた映像も、ブツンと切れた。