「…八坂さんじゃ、ないっすか」
「やぁ、桜塚くんじゃん、ごめんねぇお取り込み中に」
「まったくですよ…」
鼻で笑う桜塚を、昴流さんは見下ろす。
ガリ、とキャンディが噛み砕かれ、その手に持っていた携帯を桜塚の眼前に突きつけた。
それからわざと大声で、みんなに聞こえるように続ける。
「さて、今届いたメール、緊急情報発信の通知メールだから、見れるならみんな見てみたほうがいいんじゃないかなぁ」
「……通知メール?」
怪訝そうな顔をする桜塚が、掴んでいたぼくのシャツを離す。
ドサリと床に落ちるぼくを、昴流さんが見ていた。
「ここに居る…いや、この学校の関係者全員宛の、情報発信ってこと」
桜塚も、堀越恭子たちも、そしてクラスメイト達も。
みんなカチャカチャと携帯を取り出し確認する。
「ほら、キミも。なんてったって、キミたちが主役のようなものだからね」
一体何を言ってるんだろう。
ただでさえ殴られ続けて上手く回らない頭が余計混乱する。
でも理解するよりも先に、見せられた携帯の画面に映し出されたそれに、意識は奪われる。
それはつい先日ぼくも利用した、学園の公式モバイルサイト。
そのトップに、動画が貼り付けてあって、そこに映っていたのは、まさに今――この教室内の映像だった。