◆ ◇ ◆
飛びかけていた意識の中、さまざまな着信音が教室のあちこちで鳴っているのが聞こえる。
その異様な光景に、ぼくを殴る桜塚の手も止まる。
ざわざわと波立つ不穏な空気。
クラスメイト達の携帯が、一斉にメールを受信したようだった。
そして――
「ダメじゃんねぇ、授業中は携帯の音、消しておかないと」
場違いなほどに明るい声が、教室内に突如湧いた。
声は、教室の扉の方から。
扉はもう無いので、ただのぽっかり空いた出入り口だ。
そこにはふたつの人影。
ひとりは以前、裏庭で見かけたことのある、長髪のひと。
そしてもうひとりは、携帯片手に棒付きのキャンディーを咥えた、昴流さんだった。