陽太の言葉に、教室内がざわつく。

「なに、やっぱりお前らってそういう関係なの? ただのひきこもりだと思ってたのに、やるじゃん陽太くーん」
「いいじゃん健太、その女の前でコイツ、ぶちのめしてやれば。自慢のキレーな顔も、今日で見納めってことで」

事態が上手く呑み込めない。
何を、言っているのだろう。
なんで、陽太がぶちのめされなきゃいけないの?

騒ぐ取り巻きの笑う声に、桜塚もゆっくりと、笑った。

「…いいぜ、その代わり…」

桜塚があたしの上から退き、陽太の前にまっすぐ立つ。
それからぐしゃりと、陽太の前髪を握りつぶした。

「今日は手加減、ナシだ。…死ぬなよ…? ここではなぁ」

長い腕が一瞬で空を切る。
あたしはすぐその足元で、その様子を見上げていた。

次の瞬間には、鈍い音と共に陽太の体が机の山へと吹き飛ぶ。
まるで夢をみているみたいに一瞬で。
あたしの頬や制服や床に、血が飛び散った。