何かが激しくぶつかる音が、教室全体を大きく揺らした。

鍵のかかった教室の扉を、誰かが開けようとしているのだろう。
ぶつかる音に合わせて壁や窓が揺れる。

「な…ッ なに…?!」
「せ、先生、とか?」

「まさか、俺が居ること知ってるのに」

スカーフを解いていた桜塚の手が止まる。
あたしもゆるりと視線を向けたその瞬間。

教室の扉が激しい音と共に、内側に倒れこんできた。
扉の前にあった机や椅子が散乱する。
女の子の悲鳴がいくつも響いた。

埃の舞うその向こうに人影が揺れ、教室内の視線が一集する。

なんだか前にもこんなこと、あった気がする。わりと最近。
倒れた扉の上から、散乱する机や椅子を押し退けながら教室内にその人影が降り立つ。
咳き込むその顔がこちらに気付き、視線が合った。

金色の髪がきらきらしていた。
やっぱり綺麗だなと思った。

「……ッ、月子ちゃん……!」
「…よ、……た」

彼は笑っていた。

「陽太……!」