彼の顔が頭に浮かんだ。
弱くて臆病で泣き虫なひと。

だけどその所為で自分をずっと、傷つけ続けてきたひと。
痛みをきちんと受け止めて、涙していたひと。

「………た…」

あたしみたいに嘘で塗り固めて見ないフリなんてしない。
誰かを傷つける度に、同じだけの傷を、刃を、自分に付き立てて。

バカなひとだ。
不毛だと思う。
だけど。

「……よ、…う、た…!」

なんて、愚かで…やさしいひと。

「……陽太…!」


彼みたいなやさしいひとに、あたしはなりたかった。