「…出かけるのか?」
ふと体を離したながら言った兄さんに、ぼくはこくりと頷く。
「今行かなかったら…ぜったい、後悔する…どうしても、助けたい子が…守りたい子が、居るんだ…」
行って何ができるかはわからない。
やっぱりぼくには、何もできないかもしれない。
でももうそんなこと、今までだって何百回も、何千回も思ってきた。
そして結局何も、しないで来たのはぼくだ。
やらないことと、やろうとすることは、違う。
ぜんぜん、違うんだ。
「ぼく…また、兄さんや父さんや母さんに、迷惑をかけるかもしれない…恥をかかせて、笑われて、病院や名前に泥を塗って…もうそんなの十分してきたけど、だけど…だけどどうしてもぼく…っ 守りたいんだ…!」
行きたいんだ、できることがあるなら何かしたい。
今すぐ傍に駆け付けたい。
それは誰でもない、自分自身の為に。
「…おれ達家族よりも、か…?」
兄さんがまっすぐぼくを見つめて訊いた。
ぼくも目を逸らさずに迷いなく、答えた。
「うん…!」