「…ごめん…」

無意識にそう、呟いていた。
だけどずっと、ずっと言いたかった。

「ごめんなさい…」

兄さんの大きな体が小さく震えていた。
だけど昔みたいに、見上げるほど大きいわけではない。

ぼくも、大きくなった。
いつの間にか身長も追いついてきているし、手も足も長く伸びた。
それでも敵わない部分もたくさんあるけれど。

小さい頃、10も離れた兄さん達は、兄というよりもっと遠い存在のように思えていた。
それはまるで父親のような。
近くて遠い、存在だった。

その背を追いかけるだけの、この背を押してもらうだけの。

だけど今は、違う。
こんなに近くに居てくれる。

同じ血を、熱を、そして痛みを。
ぼくはもう二度と、間違えたりしないだろう。

もう、絶対に。