瞼を開けるとあたしは、見知らぬ場所に居た。
なんだか懐かしくも感じるこの感覚。
あたし一体、どうしたんだっけ。
手にはしっかりと何かを握っている。
おそらく、マイクだ。
分厚い壁に囲まれた、機材だらけの部屋。
そうか、あたし―…
戻ったんだ。
…戻ってきたんだ。
自分の、体に。
この場所に。
「…ねぇ…大丈夫…?」
すぐ隣りに人が居た。
驚いて仰け反った体に力が入らなくて、思わずそのまま地面に尻餅をつく。
「ちょ、ちょっと…大丈夫…?!」
「…は、い…すいません…」
久しぶりの、自分の体。
そう無意識に思うぐらいには自分はきっと“眠って”いたんだなと自覚はある。
不思議な体験の記憶も、きちんと。
「大丈夫なら、その…」
目の前の、おそらく放送委員の先輩が心配そうな顔であたしの顔を見やり、それからドアの方に視線を向けた。
「逃げたほうが、いいんじゃない…?」