◇ ◆ ◇
雲ひとつない晴天だった。
これなら天国まで迷わず行けるかな。そんなことをぼんやり思う。
『陽太は陽太なりに、勇気を出したみたいだよ』
そう言う日向さんの顔は“お兄さん”の顔をしていて、どこか晃良さんと似ている気がした。
『きみは、どうする…?』
空っぽの屋上。
もうここには誰もいない。
そう、誰も。
『……あたしももう…行くわ…』
響くアナウンスの音が、空気をビリビリと揺らしていた。
今あたしの体は、ここには無いのに。
だけど体中に電流が走っているようだった。
まるで彼の心が、放っているみたいだった。
『彼の体も、ちゃんと返してあげなくちゃ…それに…』
顔を上げて、日向さんをまっすぐ見つめる。
このひとはずっとここに、居るのだろうか。
…ずっと、ひとりで。
『彼をもう、ひとりにはできないから。…約束、したの』
晃良さんに、訊かれた。
あたし達はどんな関係だろう。
ただのクラスメイトではなくなった。
だからと言って友達ってわけでもない。
だけど確かなことがあった。
お互いが必要としている限りは、ずっと。
隣りに居るって、あの時確かに思ったんだ。
「これから先も、傍に居るって」