ぼくは未だに、この人と月子ちゃんの関係がわからなかった。
月子ちゃんを傷つけるひとだと思った。
だけど助けてくれたのも、このひとだった。
もしかしたら味方なのかも、と。そう思っていた。
──いま、なんて言った?
「きみをどうやってでもいいから傷つけろ、て言われてた。何してもいい、って言うからさ。じゃあ抱いてしまおうと、思ったんだよね」
心臓が、痛い。
掴まれた腕よりもはるかに。
「ラヴホ代くれるって言ってたけど、別にどこでも良かった、俺的に。金持って来させるとも言ってたけど、待っても来なかったしさぁ。そうゆうシュミもないから、ギャラリーには撤収してもらって。証拠だけは必ず撮れってあの子には言われたけど、さすがにねぇ…そしたらさ、だったらもっかいヤれって。ってことでさ、いくつか隠しカメラがあるけど気にしないでいーよ」
痛い、痛い、痛い。
噛み締めた唇から、血の味がした。
味方なんか誰もいない。
月子ちゃんが戦うこの世界には、誰もいない。
この世界を救わないと、月子ちゃんはきっと帰ってこない。
戻ってこれない。
でも、もう。
戻ってこなくてもいいよって思った。
ぜんぶ終わったらぼくが、迎えにいくから。
…痛かったね。
きっと、ずっと。