「堀越、恭子さん…達が、居るものだと…」
「うん、まぁ俺も、呼び出された身なんだけど」
言って、一歩こちらに近づく。
彼の口の中にあった棒付きキャンディーが、棒だけになって後は粉々に砕かれた。
ガリガリと、噛み砕かれた。
「呼び出された…? 昴流さんも…?」
どういうことだろう。
昨日の留守電は、確かに堀越恭子からだった。
だからきっとここで待ってるのは堀越恭子たちか、もしくは桜塚かもと。
そう思って来たのに。
「しつこくてさぁ、あの日の証拠、出せって」
「…?」
あの日? 証拠?
わからない。多分、月子ちゃんだったらわかったのかもしれないけど、ぼくにはなんのことだかさっぱりだった。
それでも昴流さんは躊躇なく、距離を縮める。
手の中に残っていたキャンディーの棒を、器用に指だけでペキリと折って、それをポケットに押し込んだ。
次に出てきた時その手には、携帯電話が握られていた。
「…あの日、って…」
胸が騒いだ。
ざわざわと。
縮まる距離に、ぼくは思わず後ずさる。
一歩ずつ近づいてくる昴流さんの口元は笑っているのに、ただこわいとそれだけが浮かんだ。
今までとは何かが違う気がした。
この体も、痛みも。