教室にはまだ空席の方が多い。
ちらほらと席に着いている人たちも、相変わらずこちらには無関心だ。

寒いな、と思った。
教室の隅のストーブは付いている。
だけどなんとなく、教室全体がひやりとしている気がした。

ぼくはカバンだけ机に置き、すぐに教室を後にした

目的の場所に向かう途中、冷たい朝の空気が頬を撫でる。
どくどくと脈打つ体の熱を、僅かながらに冷ましてくれた。

実習棟の校舎はひどく静かで、まるで世界にはぼくしか居ないような、そんな不思議な錯覚がした。
音は一切無く、世界から切り取られたような、小さな箱庭。

月子ちゃんがひとりで戦ってきた場所。
ぼくはひとりで、戦えるだろうか。
こんな冷たい世界で。

だけど、小さな世界だ。
ぼく達から見れば大きくても、すべてのような気がしても…ぼくが知らなかっただけで、月子ちゃんも知らないだけで。

こんなに小さな世界だったんだ。