部屋に戻るとベッドの上で携帯がチカチカと光っていた。
ぼくのじゃなくて、月子ちゃんの携帯だ。
ぼくの携帯は、自分の制服のポケットの中に入れておいた。
たくさんの情報と知識をいつでも取り出せる手の平サイズの便利な機器。
だけどあまり、役には立たなかった気がする。
恐怖するだけのブラックホールだ。
月子ちゃんの持つ携帯の方が、よっぽどすごい。そう思った。
だって確かな絆を繋いでいるのだから。
手にとってディスプレイをみると留守電が残っている。
この携帯は共用だから、家族と親しい人しか番号は知らないって月子ちゃんは以前言っていた。
しかも登録外の番号だ。
朔夜くんに言った方がいいだろうか。
だけどぼくはなんとなく、それが月子ちゃん宛だとわかっていた。
予感がしていた。
耳にあてて確認ボタンを押す。
電話の相手は、予感通り堀越恭子だった。
呼び出しの電話。
明日必ず学校に来いと。
いつもの場所で、待っているから、と。
それだけだった。
こわいくらいに冷静な声だった。
なんだかあの日とよく似ている気がした。
ぼくは桜塚に呼び出されて…金を持ってこいって、言われたんだ。
そしてあの屋上に、向かっていた。
そこで出会った。
もう何もこわくなかった。