晃良兄さんは最初、日向兄さんが死ぬ前…別の職業を、志していた。
晃良兄さんも頭が良く成績優秀だったし、きっと立派な職業を志していたのだろう。父さんも特に反対しなかった。

でも、日向兄さんが死んで、ぼくは学校にすら行けなくなって。
すべてを背負ってくれたのは、晃良兄さんだった。

『父さん、おれが…おれが、継ぐよ。おれが、医者になる』

自分の夢を、捨てて。

その背にかばってもらった。
助けてもらった。
もうずっと、呆れるくらいに長い時間、ずっと。

ぼく以外のひとはみんな、強いひとばかりだと思っていた。
そんなバカなことを、ぼくは今まで当然のように、思っていた。

晃良兄さんの背中が丸まっているのを、ぼくは初めて見たんだ。