もしも“奇跡”が起こるなら、自分以外のモノになりたかった。
こんな自分とは正反対の、もっと、もっと──…もっと。

あたし達に起こったのははたして“奇跡”なのだろうか。

それとも、別の。

『あたしも…なれるなら、なりたかった…』
『……』

『あの日、ここで、この屋上で…あたしはただ、何も感じないように、傷つかないように、自分を必死に守ってた…なるべく世界の隅っこで、小さくなって、うずくまって…でもそれで今まで、大丈夫だった。どんなことがあったって、何されたって、平気。だってそう、信じてきたから。あたしはあたしを、自分自身を、ちゃんと大丈夫だって、信じてた…』