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ふいに胸が熱くなった。
ひかれるように顔をあげると、そこはさっきまでの部屋ではなくて、学校の屋上。

そこには17さいのあたしと、それから日向さんが居た。
日向さんはフェンスに背を預け、空を仰いでいる。

『学校の屋上、来たことある?』
『……何度か』

夜なのだろうか。辺りは暗い。
星の明かりも見えないほど。月の存在も感じられないほど。
真っ暗だった。

日向さんはあの部屋にあった学ランを着ていて、あたしも制服姿だった。

『ぼくは毎日のように、ここに来てたよ。明日こそは何かが変わるって、信じながら…願いながら。だってなんとなくほら、天国に近いでしょ? だから神様に、届くんじゃないかと思って』
『……なに、を…?』

日向さんはやわらかく笑う。

『…“ぼく”以外の誰かに、なることを』